日時 令和7年3月31日(日)
はれー倶楽部第3回の例会報告です。
参加者は31名でした。
報告が遅くなったため、一部に記憶があいまいな点があり、プラネタリウムとミニ講座の内容を混同している可能性があることをお詫びしておきます。
文中の丸数字は関連リンク(文末)の番号を示します。
1.プラネタリウム「「高エネルギー天文学」
宵の空では、木星、月、火星を見ることができます。また、南東の空には、春の大三角①を見ることができます。夜空の様々な星座は、天の川銀河の一部で、近くにある星々です。地球を離れ銀河系の外に移動すると、宇宙にある他の星雲と同じようにうずまき銀河であることがわかります。
西の空には、冬の大三角②が見えています。これらの星は全て可視光で観測したものですが、宇宙を観測する手段は可視光だけではありません。
よりエネルギーの高いX線やガンマ線などの電磁波は、大気を通過することができないので、人工衛星(X線観測衛星③)を使った観測が行われています。これにより、可視光とは違った宇宙の姿を見ることができます。
X線観測衛星は、「ひとみ」の後継機である「XRISM④」、ガンマ線観測衛星は「フェルミ衛星⑤」などがあり、高エネルギーを放出するブラックホールや中性子性、ガンマ線バーストなどの高エネルギー天文現象を観測しています。
高エネルギーのガンマ線は、大気と反応して空気シャワー⑥(電磁シャワー⑦)と呼ばれる現象を引き起こすため、これを観測するガンマ線望遠鏡⑧を利用して地上からも観測が行われています。
プラネタリウムでは、明けの明星(金星)が明るく輝き、朝を迎えました。
2.ミニ講座「高エネルギー天文学、多波長天文学」
「高エネルギー天文学、多波長天文学」と題して河野学芸員によるミニ講座が行われ、プラネタリウムの内容を掘り下げて解説していただきました。
電磁波は波長の長い順(エネルギーの低い順)に、電波(1m~)、赤外線(100μm~)、可視光(700nm~)、紫外線(400nm~)、X線(10nm~)、ガンマ線(1pm~)となります。このうち大気を通過できるのが、電波と近赤外線(1μm~)、可視光になります。
電波のうち、ミリ波は大気中の水蒸気の影響を受けるので、アタカマ砂漠の電波望遠鏡(アルマ⑨)で観測が行われています。赤外線や高エネルギーの電磁波は大気に遮られるため、宇宙での観測が必要になります。高エネルギーの電磁波のうち、ガンマ線は空気シャワー(電磁シャワー⑦)を発生させるので、地上でもガンマ線望遠鏡⑧を利用した観測が行われています。
X線天文学⑩は、1962年にロケットを使った観測で、リカルド・ジャッコーニが太陽系外のX線天体を発見したことに始まります。その後様々なX線観測衛星が打ち上げられました。最新のものは2023年に打ち上げられた、「XRISM④」です。
XRISM④に搭載されているのは、X線分光観測を行うマイクロカロリメータ(Resolve)と38分角(満月程度)の視野をもつX線望遠鏡(Xtend)です。マイクロカロリメータは絶対零度付近(50mK)まで冷却され、X線光子1個ごとのエネルギーを測定することができます。これは機関紙229号のサブミリ波用ボロメータ受信機と原理的には同じ手法です。
Xtendは広角のため、超新星残骸SN1006の膨張の様子を一度の撮影で捉え、マイクロカロリメータを利用して元素の量についても調べることができました。
大マゼラン雲の超新星残骸N132Dの観測では、元素固有の特性X線のスペクトルから、元素の種類と量、そのドップラー効果を利用しての爆発の3次元構造、スペクトルの幅から求められる温度により、爆発のエネルギーなどが推定できます。⑫
さらに、N132Dの電波による観測により、分子雲との相互作用がわかるので、X線による観測と組み合わせることで、天体の全体像を明らかにすることができます。
NGC4151は6200万光年の距離にあり、中心に巨大なブラックホールをもつ渦巻銀河です。中心部をX線で観測することで、ドップラー効果によりトーラスと呼ばれる構造の半径を0.1光年、高輝線領域の半径を0.01光年と推定することができました。⑫
高エネルギー天文学のもう一つの柱として、ガンマ線天文学⑬があります。1912年にオーストリアの物理学者フランツ・ヘス⑭により、宇宙から高エネルギーの放射線が降ってくることが明らかにされました。これは宇宙線と名づけられましたが、高エネルギーであるため、大気中の原子核と反応し、空気シャワー⑥と呼ばれる2次放射線を次々と発生させます。
宇宙からのガンマ線の場合は、陽電子・電子対とガンマ線をカスケード状に発生させ「電磁シャワー⑦」と呼ばれます。一方、高エネルギーの陽子や原子核などの粒子の場合は、π中間子、ミュー粒子、ニュートリノなどをカスケード状に発生させ、「ハドロンシャワー⑮」と呼ばれます。
宇宙には様々な磁場があり、荷電粒子による宇宙線は磁場の影響を受けて曲がるため、発生源を特定することは困難です。一方で、ガンマ線は磁場の影響を受けず直進するため、発生源を特定することができ、ガンマ線観測衛星⑤やガンマ線望遠鏡⑧を用いた天体観測に適しています。
宇宙線⑯⑰のエネルギーと個数の関係を対数グラフで表すと、負の傾きの直線となり、高エネルギーの宇宙線は極端に少なくなります。しかし、ごくまれに、超巨大なエネルギーを持つ宇宙線が観測されることがあります。1991年のオーマイゴット粒子⑱や2021年のアマテラス粒子⑲が知られています。宇宙線は、磁場の影響を受けるため、これらの宇宙線がどこから来たのかを正確に知ることは困難です。
以上のように、高エネルギー天文学について紹介しましたが、電磁波は、そのエネルギーにより電波・赤外線・可視光・紫外線・X線・ガンマ線と多くの種類があります。様々な観測衛星や望遠鏡が設置されています。また、電磁波以外にも天文現象を観測する手段として、宇宙線、ニュートリノ、重力波があり、これらの観測結果を組み合わせることで、より詳細に天文現象を解明することができるようになります。これをマルチメッセンジャー天文学⑳と呼んでいます。
最後に河野先生を囲んで記念撮影を行いました。
河野先生を囲んで記念撮影
<関連リンク>
①春の大三角 – Wikipedia
②冬の大三角 | 天文学辞典
③X線観測衛星 – Wikipedia
④X線分光撮像衛星XRISM | JAXA
⑤フェルミ衛星 | 天文学辞典
⑥空気シャワー | 天文学辞典
⑦電磁シャワー | 天文学辞典
⑧大気チェレンコフ望遠鏡 | 天文学辞典
⑨アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 – Wikipedia
⑩X線天文学 | 天文学辞典
⑪リカルド・ジャコーニ – Wikipedia
⑫XRISMの初期科学成果 | 科学成果 | X線分光撮像衛星XRISM | JAXA
⑬ガンマ線天文学 | 天文学辞典
⑭ヴィクトール・フランツ・ヘス – Wikipedia
⑮ハドロンシャワー | 天文学辞典
⑯宇宙線 | 天文学辞典
⑰宇宙線 – Wikipedia
⑱オーマイゴッド粒子 – Wikipedia
⑲アマテラス粒子 – Wikipedia
⑳マルチメッセンジャー天文学 – Wikipedia