日時 令和7年10月26日(日)
令和7年度はれー倶楽部第2回の例会報告です。
参加者は26名(講演会)でした。
以下文中の丸数字は、章末の参考リンクの番号です。
1.プラネタリウム「シドニーの星空 ~姉妹都市提携45周年記念~ 」
10月26日にH-3ロケットの打ち上げがあり、最初に当日の映像①を見せていただきました。
秋の星空になりましたが、宵の空では夏の大三角を見ることができます。南の空の低空の明るい星は一等星のフォーマルハウトです。フォーマルハウトの上には、それより少しだけ明るい土星があります。土星の環は現在、真横に近い角度になっており、見かけの上で細く見えます。11/25(火)には土星のオンライン観望会②(申込不要)があります。
冬の星座でぎょしゃ座の0等星、カペラも北東の空に見えてきます。土星の上の天頂付近には、秋の四辺形があります。これは3つの2等星と3等星で構成されるため、土星を基準にして探すと見つけやすいです。秋の四辺形はペガスス座とアンドロメダ座にまたがっており、アンドロメダ座には、アンドロメダ銀河(4等級)がありますが、空が暗いところでないと見えません。
さて、シドニーの星空には、日本から見ることができない星座があります。天の南極を中心として、日本の北緯に相当する範囲の星座は見れません。(北緯35度の地点からは、天の南極を中心とした35度(天の南緯55度)の範囲より南は見られない)。南の星座は大航海時代に名付けられたため、カメレオンと蠅や六分儀、巨嘴鳥など珍しい生き物や、航海の道具の名前がついています。
大・小のマゼラン雲も南半球でしか見ることができません。距離はアンドロメダ銀河(250万光年)より近く、それぞれ16万光年・20万光年で、2つの星雲の距離は約8万光年です。質量は銀河系(天の川)の1/10と1/100程度です。GAIA③の観測によれば、小マゼラン雲の星は、大マゼラン雲の方向に動いているそうです。
朝になり、太陽が昇ってきますが、南半球では太陽は北の空に向かって昇ります。日当たりが良いのは北側になります。
①新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)/H3ロケット7号機打上げライブ中継
打ち上げは、最初から57分ごろ。
②2025年11月25日 オンライン市民観望会「土星」
③ガイア計画 – Wikipedia
2.昼食会
「スギモト」で牛肉のランチをいただきました。
3.特別講演会
元JAXAの久保田先生をお招きし、”「はやぶさ」ミッション総括(宇宙探査の魅力と夢の実現)”と題してご講演いただきました。スライドに沿って、かいつまんで紹介させていただきます。(先生からは、(c)JAXA以外のスライドは掲載可と伺っています。)
本日の講演内容
「はやぶさ」シリーズ(④⑤⑥⑦)を通じた夢の実現
はやぶさ、はやぶさ2年表
新しいことへのチャレンジとして、NASAの二番煎じにならないよう小惑星探査計画として立案した(サンプルリターンは難易度が高いので、当初計画には書かれていない)。当初は3~40代の若手7名で3カ月かけてstudyし、計画した。全体計画が承認されたのは1995年⑥、打ち上げは2003年。計画を成功に導いた重要なポイントは、(1)行きやすい小惑星を見つけたこと。(2)燃費の良いエンジンを開発したことなどである。
はやぶさ成功の要因
当初計画では、重量マージンがマイナス(重すぎる)であった。またレーザーを用いた高度計、距離測定装置の性能にも課題があるなど、開発上の課題は多かった。開発に関してはアジャイル方式(設計で全てを決定するのではなく、テストや実装を繰り返して開発を行う方式)で行った。打ち上げ時期は決定しており、帰還カプセルの実証はできていない状態での打ち上げとなった。
開発上の課題と対応
小惑星「イトカワ」への2回のタッチダウンの後、通信が途絶して行方不明となってしまう。しかし、軌道計算から推定できる位置をもとに、探査を続けた結果、1カ月後に電波を受信し、約1カ月をかけて姿勢制御等により徐々に通信を回復させた。(⑥参照)
通信は回復したものの、帰還を2010年に延期せざるを得ず、設計上の耐用年数を超えたイオンエンジンは限界に達し4台のエンジンのうち、正常に動くエンジンは無くなってしまった。しかし、エンジンの正常に動作する部分を組み合わせることで、辛うじて1台分のエンジンを再構成し、無事に帰還を果たした。(映画⑧にもなっています。)
エンジンの正常部分を組み合わせた
國中先生曰く「壊れない機械」を作るのは不可能。バックアップや冗長系をどう用意するかが重要。大きく7つの想定外の運用があったが、開発から一貫して同じ人が対応することで、想定外の事態に柔軟に対応できた。
7つの想定外の運用
「はやぶさ」の成功を受け、「はやぶさ2」ではC型小惑星「リュウグウ」の探査を目指した。小惑星表面ではなく、内部のサンプルを採取するための「衝突装置(SCI)」と「分離カメラ、探査ロボット」、「TMによる自律航法誘導」などを新規開発した。はやぶさ初号機に次いで史上2番目の惑星間往復航行を達成するなど多くの成果を得た。
はやぶさ2の世界初(工学上)
また、C型小惑星のサンプルリターンも世界初であり、多くの成果につながることが期待されている。
科学上の成果
「はやぶさ2」は2度目のサンプルリターンであり、ミッションを進化させた上で、失敗が許されないなど厳し条件があった。成功の秘訣として(1)ミッションを明確にし、システム要求をまとめたこと(ミッション要求書、アウトプット(技術仕様・性能)、アウトカム(効果・効用))。(2)用意周到に準備したこと(技術継承、未知の小惑星の条件設定、新規技術の絞り込み)。があげられる。運用面では様々な条件(異常・事故)を設定した訓練を繰り返し行った。
用意周到に準備する
初号機「はやぶさ」のマネジメントは特殊で、「この指とまれ」方式で、プロマネ以外は辞令なし、垣根を越えてミッションをやりたい熱意のあるメンバーを集めた。
プロジェクト推進は、用意周到な準備によるチャレンジと仕事を魅力的にする努力が大切。
プロジェクト推進の心構え
その他のトピックとして、H2ロケットで打ち上げられたSLIM⑨⑩が2024年1月20日に月面着陸に成功し、小型ローバーのLEV-1, LEV-2が写真を送ってきている。このうちLEV-2(SORA-Q⑪)の開発にはタカラトミーとSonyが協力しており、原寸大のモデル(スマホで操作可能)が発売された。
JAXAの今後のミッション⑫としては、「月着陸」「火星着陸」「遠方探査(土星以遠)」「太陽磁場観測」などが計画されている。はやぶさの後継としては「次世代小天体サンプルリターン(火星衛星等)」、「彗星からのサンプルリターン」が計画されている。
また、リュウグウの最新分析結果からは、リュウグウが約500万年前に地球近傍軌道に接近し、宇宙風化によって含水鉱物が隠されていると推定されている。
<質疑>
講演後に活発な質疑が行われました。簡単にまとめておきます。
Q1 はやぶさ2で、弾丸を発射すると反動が大きいのでは?
A1 弾丸は10g(300m/s)に対し、はやぶさは600kgなので、反動は非常に小さくなります。
Q2 自律制御で失敗のリスクをどう考える?
A2 安全な方向に傾ける。アボートして再トライできるよう燃料に余裕を持たせ、ターゲットマーカーを5つ用意している。
Q3 はやぶさ2のサンプル解析の結果でわかったことは?
A3 アミノ酸の化合物や水の存在が明らかになった。今後、ベンヌのサンプルの分析結果と突き合わせていく。
Q4 新ミッションは今後どんなものがあるのか?
A4 フォボスのサンプルリターン、彗星のサンプルリターン、月の氷探査、木星圏、土星圏の探査など
Q5 イオンエンジンは推進器としてどう評価できるのか?
A5 少ない燃料で長時間かけて加速するには向いているが、火星等の遠距離に人を送り込むためには、旅行期間を短くするために、短期間で加速する必要があり、原子力エンジン等が必要になるのではないか。
Q6 月の有人探査に向けてのJAXAの計画は?
A6 日本のロケットで有人飛行は難しい。米国の宇宙船に乗るのが現実的。日本は有人月面探査ローバーの開発などを予定している。
Q7 宇宙エレベータの実現可能性は?
A7 宇宙エレベータは、カーボンナノチューブ等を使う夢の技術だが、大気中で風の影響を受けるため、安定して固定するのが難しいと考えられる。
Q8 スペースコロニーの実現可能性は
A8 巨大建造物を宇宙空間に作るには、莫大なコストがかかるので、コスト面の問題が大きいと思われる。
最後に、久保田先生と記念写真を撮影し、お開きとなりました。
特別講演後、久保田先生と一緒に記念撮影
④小惑星探査機「はやぶさ」 | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所
⑤小惑星探査機「はやぶさ2」 | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所
⑥はやぶさ (探査機) – Wikipedia
⑦はやぶさ2 – Wikipedia
⑧はやぶさ/HAYABUSA(映画) – Wikipedia
⑨小型月着陸実証機 SLIM | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所
⑩SLIM – Wikipedia
⑪SORA-Q|タカラトミー
⑫将来計画 | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所